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概要:「春闘」って聞いたことありますか?若い世代では「知らない」「自分には関係ない」という人が大半でしょう。でも、知っておいて損はありません。
春闘とは?毎年春、労働組合と経営者が全国一斉に賃金アップなどについて交渉する国民的な一大イベント……だった。
「春闘」って聞いたことありますか?毎年春、働き手がつくる労働組合と経営者が全国一斉に、賃金アップや職場環境の改善について交渉する国民的な一大イベント……でした。最近は勤め先に労組がなかったり、あっても加入しない人も多く、若い世代では「自分には関係ない」という人が大半でしょう。でも、今でも大切な役割があるんです。
賃上げ交渉?「ピンと来ないし、イメージが持てない」
労働組合の大規模な集会。最近は労組がない企業が増え、すでにある労組に入らない働き手も多くなっている。労組に入っている勤め人は2割に満たない。
REUTERS/Issei Kato
「春闘と言っても、『テレビの中の出来事』というイメージしかないですね」
東京都内のIT系中小企業に勤める20代の男性は淡々とそう話した。
経済ニュースに関心があるので春闘に関する報道も目にするが、勤務先に労組はなく、「労使交渉」が行われている様子もない。
自分の月給は年齢に応じて少しずつ上がっていく部分もあるが、特にボーナスは会社と個人の業績によって左右される度合いが大きい。自分が頑張り、会社のビジネスも好調なら、それ相応に報われる仕組みだ。
そのように決まる賃金にも、職場の環境にも、特に不満はない。社内の管理職は「何かあればいつでも相談してほしい」と日ごろから言ってくれる。実際、上司に個人的な事情を相談した結果、ふさわしい部署に異動できた人もいた。
賃上げや労働条件の改善を求めて労組が経営側と交渉する、ということ自体が「ピンと来ないし、イメージが持てません」(男性)。
成果主義が拡大、「一律の賃金アップ」は消滅
バブル崩壊後、個人の働きぶりによって賃金が上下する「成果主義」が広がるなどして、賃金の年功色は薄まっていった。
撮影:今村拓馬
労働組合の中央組織・連合によると、春闘の正式名称は「春季生活闘争」。このいかめしい名前だけで引いてしまう人もいるかもしれない。1950年代半ばに始まったとされる。
春闘:さまざまな産業の大企業から中小企業までが、毎年春の同じ時期に横並びで労使交渉を進める。自動車、電機といった主力産業の大手が賃上げ率の「相場」をつくり、中小企業でもその水準を参考に賃上げ率が決まる。個々の労組がバラバラに経営側と話し合うよりも交渉力が増し、賃金の底上げに貢献してきた。
これが、一昔前までの教科書的な解説だった。しかし、今や冒頭の男性のように「ピンと来ない」人の方が圧倒的に多いのが実情だ。
そうなってしまった最大の理由は、「賃金の決まり方」が大きく変わったことだ。
バブル期までは、年齢とともに賃金がほぼ横並びで上がっていく年功色が強い制度がふつうだった。
しかし日本経済が長い停滞期に入ると、年功制によって膨らむ一方の人件費は経営の重荷に。個人の働きぶりによって賃金が上下する「成果主義」、ポストや担当する仕事の内容に応じて決まる「職務給」が広がるなどして、賃金の年功色は薄まっていった。
同時に、賃金などを巡る労使交渉の対象外とされることが多かった非正社員の割合が大きく高まった。今や勤め人の4割近くがパートやアルバイトといった非正社員だ。
その結果、「働き手が労組のもとに団結して一律の賃上げを求め、経営側がそれに応える」という構図自体が成り立ちづらくなった。
新興企業を中心に労組がない企業がどんどん増え、すでにある労組に入らない働き手も多くなっている。厚生労働省によると、労組に入っている勤め人は1980年代初めには3割ほどいたが、2018年には17%にとどまる。
厚労省の集計によると、バブル絶頂期だった1989年の春闘での賃上げ率は5%を超えていたが、その後は急速に低下し、2002年以降は長く1%台に低迷。各企業ごとの賃上げ率の格差が広がる傾向も続く。
成果が乏しい春闘への関心は急速に薄れていった。
「ベア復活」とは?「官製春闘」に再び注目
政府は2014年の春闘以降、安倍晋三首相(左)が自ら経営側に賃上げを要請するなどして民間労使の交渉に介入。「官製春闘」と呼ばれるようになった。
REUTERS/Toru Hanai
再び春闘がマスコミの注目をそれなりに集めるようになったのは、2012年末に第2次安倍政権が発足した後だ。
「賃金が上がれば、消費が増えて企業の業績も良くなり、さらに賃金が上がる」。そんな経済の好循環を実現させるため、政府は2014年の春闘以降、安倍晋三首相が自ら経営側に賃上げを要請するなどして民間労使の交渉に介入。「官製春闘」と呼ばれるようになった。
緩やかな景気回復が続くなかで賃上げ率も上向き、2014年には久々の「ベア復活」も話題となった。
一口に「賃上げ」と言っても、その内訳には定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)の2種類ある。
定昇:年齢が上がったり勤続年数が増えると月々の基本給が上がる年功的な仕組みによる昇給のこと。各企業の制度上、あらかじめ決まっている。
ベア:定昇とは別に、基本給の水準そのものを底上げするもの。
経済の高成長が続き、物価もどんどん上がっていた時代にはおおむね2~5%のベアが実現していたと言われるが、2000年代以降はベアに踏み切る企業はほとんどなくなっていた。
「ベア復活」とともに、定昇も含む賃上げ率は2014年以降、2%台に回復。3月半ばにヤマ場を迎える2019年の春闘交渉もほぼ前年並みの水準で決着する、という見方がエコノミストの間では目立つ。
子育て・介護対策、長時間労働の解消…賃上げだけが春闘じゃない
もう春闘に意味はないのか?「そんなことはありません」と言い切る日本総研の山田久理事。
撮影:庄司将晃
とはいえすでに述べたように、春闘の結果として公表されるさまざまな働き手の昇給率の平均を示す「賃上げ率」と、個々の働き手の賃金アップ率との関係はかなり薄れている。最近の春闘で「ベア相当額」を公表している企業でも、それがすべての働き手にとって一律の賃上げを意味するケースは珍しくなった。
個々の働き手にとっては、自身の目標達成度の査定や自社の業績が手取り収入に与える影響の方が、はるかに大きいケースが大半だ。
もう春闘に意味はないのだろうか?
「そんなことはありません」
日本総研の山田久理事はそう言い切る。
「確かに個々人の賃金アップ率と春闘の賃上げ率の関係は薄れましたが、賃金水準の底上げに向けた労組の交渉力が強まる、という春闘の意義が完全に失われたわけではありません。
それに春闘の労使交渉のテーマは賃金だけではありません。子育てや介護と仕事を両立するための職場環境作りとか、長時間労働の解消といったテーマも重要です。それらに関する具体的な事例が、春闘の時期にメディアで集中的に報じられることで、経営者にも働き手にも『今、世の中全体としてこういうことがテーマになっているんだ』と認識されやすくなる意義は大きいと思います」(山田氏)
勤務先に労組がなくても、社員が選ぶ「過半数代表者」が経営側といろんなテーマについて協議しているケースは多い。代表者が誰か知らなくても、人事担当部署などに聞けば教えてくれる。
まずはどんなことが経営側との間で話し合われているか聞いてみて、関心が高いテーマがあったら意見を伝えるのも良いかもしれない。
「市場経済においては本質的に、個々の労働者は経営者より立場が弱い。能力が高くて引く手あまたという働き手でも、例えば病気になったら事情が変わる場合もありますよね。だからこそ労働者の代表が、経営側との交渉によって労働条件を改善していくことが重要なんです」(山田氏)
勤務先で春闘があってもなくても、年に1度のこの時期くらい、自分自身や職場の仲間の「労働者の権利」について考えてみるのも良いのでは?
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