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概要:米国の4月の個人消費デフレーターは前年比プラス6.3%となった。3月の同6.6%に比べればわずかに低下しており、米国のインフレはピークを越えたという見方が少なくない。
[東京 6日] - 米国の4月の個人消費デフレーターは前年比プラス6.3%となった。3月の同6.6%に比べればわずかに低下しており、米国のインフレはピークを越えたという見方が少なくない。
米国のインフレが仮にピークを打ったのだとしても、問題はここからである。FRBは、インフレ率が2023年中に2%台まで低下すると予測する。それは可能だとは思うが、景気後退を伴わずに可能かどうかは微妙である。門間一夫氏のコラム。
しかし、仮にピークを打ったのだとしても、問題はここからである。米連邦準備理事会(FRB)は、インフレ率が2023年中に2%台まで低下すると予測する。それは可能だとは思うが、景気後退を伴わずに可能かどうかは微妙である。
<歴史的な人手不足>
米国の高インフレには様々な要因が作用しているが、基調的なインフレ圧力の決め手は賃金である。5%台という今の賃金上昇率はあまりに高過ぎる。これを3%台に早期に低下させることが、インフレの長期化を回避する鍵である。
そのためには、今の歴史的な人手不足を解消し、労働需給をバランスさせなければならない。労働供給が増えてくれれば一番よいが、これまでの状況から見て、そこに大きな期待はかけられない。ならば経済活動を抑制し、労働需要を減らすしかない。
労働需要が強過ぎることはFRBもよく認識している。FRB幹部が引き合いに出すのは、労働需要すなわち求人数が、失業者数に対して1.9倍にも達している事実である。
米国の労働市場では、この数字は1を下回るのが普通である。コロナ前のピーク時でも1.2倍であり、その時ですら労働市場は歴史的な強さと言われていた。1.9倍というのは目を疑うほど大きな数字であり、労働市場は想像を絶する過熱状態にある。
これほど過大な労働需要を減らすには、経済活動をかなり抑え込まなければならない。単純な計算をしてみよう。上記の1.9倍をコロナ前ピークの1.2倍まで下げるには、求人数を430万人程度減らさなければならない。これは全米雇用者数の3%弱に相当する。
労働需要を減らすには、労働生産性を高めるか、実質国内総生産(GDP)を低下させるか、またはその組み合わせしかない。コロナ前、労働生産性の上昇率は年平均1%程度であったので、今後もそのあたりがめどになるだろう。
すると、雇用者数の3%弱に相当する労働需要を減らすには、実質GDPを2%近く低下させなければならない。あくまで機械的な計算だが、FRBが1年程度でインフレを確実に抑え込んでいくためには「マイナス2%成長」が必要なのである。
<年末に政策金利3.5%、十分ありうる>
最近は米国経済に減速の兆しも出てきている。市場には、景気後退のリスクが高まったら、FRBは利上げを停止して景気後退を回避する、との見方もある。しかし、「マイナス2%成長」くらいでなければ物価の安定が危うくなるのだとすれば、むしろ景気後退を早期に実現することこそ、FRBの使命である。経済がここまで過熱してしまった以上、厳しい選択肢しか残されていないのである。
パウエル議長をはじめ多くのFRB幹部が、6月0.5%、7月0.5%の連続利上げを示唆している。それによって、あるいは経済の自律的な作用により、夏の終わり頃までに景気後退入りがはっきりするなら、そこで利上げの手を緩めることは可能かもしれない。しかし、経済がしぶとく持ちこたえれば、賃金や物価の上昇圧力は沈静化しない。
賃金や物価の上昇圧力が高いまま時間だけが経過していけば、高インフレが人々の中長期的な期待に定着し、米国は2%インフレに簡単には戻れない国になってしまう。いわゆる「2%のアンカー」がはずれてしまうのである。
これこそFRBが最も恐れているシナリオであり、それを防げるかどうかは、おそらく今後半年から1年程度が勝負になる。多くの時間が残されているわけではない。
「FRBが過度に利上げすれば景気は後退してしまう」という心配をよく聞く。経済をオーバーキルするような政策ミスを、FRBは犯しかねないというわけだ。しかし、前述のとおり、今は景気後退をもたらす程度の利上げこそ「適度」な利上げなのであって、それはオーバーキルでも政策ミスでもない。
いったん勢いのついた内需は、簡単には弱まらない可能性が高い。家計はなお潤沢な余剰資金を保有しているし、この夏は旅行やレジャーの本格回復も見込まれる。米国経済をマイナス成長にまで持っていくには、おそらくFRBがハイペースで利上げを続けなければならない。
6月、7月だけでなく、9月、11月、12月と今年全ての米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%ずつの利上げが行われることは十分ありうる。その場合、本年末の政策金利は3.25─3.5%になる。
<為替相場は新たなストーリー模索へ>
本年末3.5%という政策金利の水準は、FOMCメンバー中で最もタカ派のブラード・セントルイス地区連銀総裁の見立てである。中立金利(緩和でも引き締めでもない金利水準)が2.375%とされているのだから、本年末3.5%は高過ぎると感じられるかもしれない。
しかし、中立金利というのはあくまで机上の概念であり、その水準が実際に何%なのかはよくわからない。中立金利は、理論モデルの中では重要な役割を果たすが、実際の金融政策ではたいして役に立たない場合が多い。
上記の2.375%という数値は、中長期的なインフレ率が2%にアンカーされている前提で推計されている。ところが今は、その前提こそがまさに問われているのであって、最近の賃金動向からみると、中長期的な期待インフレ率がもっと高くなっている可能性は無視できない。その点を1つとってみても、中立金利の推計誤差はかなり大きい。
政策金利を3.5%まで上げても、それで十分な引き締めになるのかどうかは、実際に上げてみるまでわからない。今の労働市場のひっ迫状況や需要の底堅さなどを踏まえると、直感的には年末3.5%あるいはそれ以上の利上げが必要になる可能性が、相応に高いように思える。
一方で、これから半年程度で米国経済が急に失速する可能性も、排除することはできない。インフレ圧力がここまで大きくかつ長引くことは、当初FRBも市場も、そして筆者自身も予測できなかった。イエレン財務長官も、インフレに対する当初の見方は間違っていたと認めた。コロナ禍や地政学リスクなど、前例のないイレギュラーな要因にかく乱され続ける中で、経済・物価の予測には謙虚さが求められる。
米国で仮に大幅な利上げが必要になった場合に、それが単純にドル高・円安につながると言えるのかどうかも明らかではない。今年の春は、FRBの利上げが織り込まれるにしたがって、米国の長期金利が素直に上昇し、それがほぼストレートにドル高・円安につながった。
しかし、FRBが本年末に3.5%、あるいはそれ以上という勢いで政策金利を引き上げたとしても、既に3%近辺まで上昇している長期金利のさらなる上昇余地は、大きくないかもしれない。
長期金利がさらに大きく上昇するとすれば、2%を超えるインフレが今後何年も続き、FRBが高めの金利を何年も維持しそうだ、という話になった場合である。そうではなく、3年もすればまた低インフレが問題になる可能性が相応にあるのなら、FRBが大幅に利上げを進めても、長期金利はあまり上がらずイールドカーブが「逆イールド」になるだけであろう。
景気後退が不可避になりつつある米国経済と、これから回復する日本経済の、景気局面の違いをどうみるかという論点もある。購買力平価などからみて、円は既にずいぶん下落したという事実も無視できない。
日米の金融政策の違いだけでわかりやすく為替を語れた局面は、いったん終わったように思う。FRBの金融政策が引き続き最大のテーマであり続けるのかどうかも含め、為替市場は新たなストーリーを模索する段階に入りつつあるように見える。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラム向けに執筆されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*門間一夫氏は、みずほリサーチ&テクノロジーズのエグゼクティブエコノミスト。1981年に東京大学経済学部を卒業後、日本銀行に入行。86年に米ウォートンビジネススクール留学。調査統計局長、企画局長を経て、12年に日銀理事(13年3月まで金融政策担当、以降、国際担当)を歴任。16年に日銀を退職し、みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミスト。21年4月から現職。
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