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概要:UBSグループは銀行業界で最大規模となる買収の合意をわずか数日でまとめた。しかし、そのための下準備は何年も前から行っていた。
「信頼の危機」がスイスに及んだ時、ケレハー氏は準備万端
古巣のモルガン・スタンレーからアドバイザー集め緊急計画練る
このプロジェクトはトップシークレットで、モルガン・スタンレーでも同僚がチューリヒで何をしているのかを知っている者はほとんどいなかったと、関係者が匿名を条件に述べた。
こうした取り組みのおかげで、3月半ばに米地銀から始まった信頼の危機がスイスに広がった時、UBSはすでに準備を整えていた。
3月15日にスイス国立銀行(中央銀行)がクレディ・スイスに緊急流動性を供給すると、UBSはそれまでのシミュレーションから直ちに実戦モードに切り替えた。UBSはモルガン・スタンレーに加え、JPモルガン・チェースからアドバイザーやバンカーを呼び寄せた。その一部はジェット機でチューリヒに駆け付け、機密保持契約に署名した。
その後、決定的な週末を通じて不眠不休の交渉が行われた。アドバイザーらは睡眠時間を削りシャワーも浴びずに働き続けた。その結果まとまった買収合意は、一部の債券を無価値にし伝統的な株主の権利も踏みにじる内容で、「大き過ぎてつぶせない」銀行への配慮が前面に出たものだった。スイス国民は憤慨したが、大規模な世界的危機は回避された。
クレディ・スイスの緊急買収は、既に欧州で最も健全な銀行と見なされているUBSにとって大きな利益がある。同時に、この評判を脅かすリスクでもある。UBSのトップにあったアイルランド人バンカーのケレハー氏(65)は危機時の合併が企業を変貌させ得ることや、変動の激しい投資銀行業務が銀行を脱線させ得ることをよく知っていた。
メガバンク
ケレハー氏はここ10年余りで最も影響の大きい銀行統合を率いることになる。利益の大きい富裕層向け事業における世界の力関係を形成するとともに、国内勢を足元にも寄せ付けないばかりかスイス経済の2倍の規模を持つメガバンクを生み出す仕事に取り組む。
同氏は合意に達した19日の夜遅くアナリストとの電話会議で「スイスにとって歴史的な日だ。率直に言ってこのような日が来ないことを望んでいた」と語った。「協議を開始したのはUBSではないが、この取引はUBS株主にとって金融面で利点があると考えている」と説明した。
ケレハー氏と取締役会メンバーは4月5日の株主総会で、合併合意についての議決権行使機会を奪われた株主と向き合う。前日にはクレディ・スイスの取締役会が怒れる株主らに謝罪した。
クレディ・スイス会長、「心からおわび」-株主総会で謝罪
UBSは合併後につなぎ留めたい優秀な人材や顧客、維持したいシステムについて検討するチームを設置した。合併により1兆5000億ドル(約198兆円)余りの資産を有し、全世界に1万2000人超のウェルスマネジャーを抱える巨大銀行が誕生する。
UBSとモルガン・スタンレーの広報担当者はコメントを控えた。
割安感
買収合意にUBS株主は総じて拍手喝采した。長年のライバルを、ある計算に基づけば額面1ドルに対して5セントで取得できるのだ。30億スイス・フラン(約4400億円)での買収には政府による潤沢な保証と流動性供給が付随している。UBSはクレディ・スイスの最も貴重な資産であるスイス事業とウェルスマネジメント事業を割安価格で入手できる絶好の機会を与えられた。
いかに割安かは以下の比較が示している。UBSは昨年、運用資産270億ドル相当を持つロボアドバイザー、ウェルスフロントを14億ドルで買収することで合意。この計画は突然中止されたが、クレディ・スイスの買収価格はこの合意の2倍強に過ぎないのに対し、得られる運用資産は50倍以上だ。
一方で、債券保有者はマイナス面に注目。複数の格付け会社がUBS債の見通しを引き下げた。合意からわずか数時間後にケレハー氏はセルジオ・エルモッティ前最高経営責任者(CEO)に接触し、ラルフ・ハマーズ現CEOに代わってエルモッティ氏を起用することを決めた。大規模な事業再編の経験を持つ人材を呼び戻したことになる。
ケレハー氏はこの人事について説明する先週の記者会見で、クレディ・スイス買収は、金融危機時の「08年に行われたどの案件よりも大きいと言える。これにはかなりの実践リスクが伴う」と語った。
それでもケレハー氏は、やり遂げた場合に得られるものを知っている。
ケレハー氏はモルガン・スタンレーに25年余り在籍し、トレーディングと資本市場業務で昇進を重ねた。活発で社交的な営業マンでゴルフと葉巻、英国のモダンアートを愛する。金融危機時にモルガン・スタンレーの最高財務責任者(CFO)を務め、交通事故で腰を痛めた後にオフィスの床に寝て仕事をしたこともあった。
オックスフォード大学で歴史を専攻したケレハー氏はCFOとして、モルガン・スタンレーがシティグループの証券部門スミス・バーニーを09年に買収する取引に関わった。
統合には数年かかり、当初はつまずきもあったが、最終的な成功はモルガン・スタンレーを資産運用事業の巨人に変身させ、同行株はここ10年、世界の銀行株の中で最高のパフォーマンスを誇っている。モルガン・スタンレーは現在、ウェルスマネジメントと投資管理事業で5兆ドルを超える顧客資産を持つ唯一の投資銀行だ。UBSはクレディ・スイス買収に伴いこれに肩を並べる計画だ。
金融危機後のケレハー氏の仕事は、モルガン・スタンレーの投資銀行部門を見直し、ウェルスマネジメント事業をより安定させ盛り立てることだった。
同氏が携わったのは、トレーディング事業が古いデリバティブ(金融派生商品)や流動性が低く価値評価が難しい資産のポジションを巻き戻す作業だ。大きな額の損失が出ることもあったが、今回は同様のやっかいな資産に直面しても90億フランの公的バックアップがある。
エルモッティ氏が在任中に果たせなかった野心の一つが、大規模な買収だ。同氏に今、この機会が訪れた。クレディ・スイスが抱える問題の多い投資銀行資産を売却し、ウェルスマネジメントの巨大プレーヤーを作り出し、スイス金融業界の地位と名誉を回復する仕事の最適任者として白羽の矢が立った。
ケレハー氏は19年にモルガン・スタンレーを辞めた後、スペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの500マイル(約805キロ)のサンティアゴ巡礼路を歩いた。今回の道のりはさらに遠く、同氏にとって人生最長の旅になるかもしれない。
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